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パキプス水耕管理①【株到着】


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今回はパキプスの水耕発根について投稿したいと思います。


出版されている塊根植物の書籍の中でもパキプスの水耕発根について言及しているものはありますが、実際に管理方法としてどうなのか。水耕で発根しても、その後に土に植え替えてからは?なんてみなさんが気になるところも検証してみましたので、参考程度にご覧ください。尚、一般的には数多くパキプスの発根管理をされている方々の間では水耕栽培はあり得ない管理法とされているようです。なので今回の内容は、決してこれからパキプスの水耕栽培をしようという方へ全員にオススメ出来る方法ではありません。もしこの管理方法をするのであれば各自の自己判断の元で参考にしてください。


今回はまずは株の状態確認と下処理、管理環境までの紹介です。

 

 

 

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  「今回、発根管理をする株」


今回管理するのは業者の方から直接仕入れた8月輸入の株です。どれもパッと見の質感や幹の状態はまずまずですが、根の切り口を見ると主根が短かったり、切り口も雑で少し心配な株もあります。でも今の時点では枯れている様子ではないので、ここからの管理次第でしょうか。


ここ最近、輸入されているパキプスはしっかりと現地で発根させてから抜いてすぐに出荷されている株も多く、鮮度がいいものがたくさん入ってきているようです。現地でしっかり根出しをしてからスピーディーに輸出するノウハウが出来たのでしょうか。貴重な命を少しでも生かすためにいい傾向だと思います。これが安定して続けば本当にいいのですが…

 

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 「パキプス自生地の気候」(引用:旅行のとも、ZenTech)

 

これはパキプスの現産地トゥリアラの年間の気温と降水量です。日本とは季節が逆の気候で、11月〜4月の蒸し暑い雨季と、5月〜10月の乾季に分かれます。パキプスの成育期はもちろん11月〜4月の雨季です。と考えると日本に8月に入ってきた輸入株は現地では休眠期の乾季に掘り出された株ということですね。ただ乾季といっても日本のように最低気温が0度近くまで下がる訳ではなく現地の平均最低気温は15度程度です。

休眠期にはパキプスは葉を落としているのかまでは情報として掴めませんでした。ただ今思えば、日本で秋から冬にかけて輸入される株は青々とした葉が残っているものが多く、春から夏にかけて輸入される株は葉が残っていない株が多い気がします。最近は現地で葉を落としてから輸入しているのかな?なんて思っていましたが、実際のところはどうでしょう?(あと可能性があるのは成長期の輸入株は現地で葉を毟って落としてから送っているのかもしれませんね)


そして最も気になるのが輸入時期による生存率の違いです。一般的に輸入株は植え替えと同じで休眠から成育期に入る頃(芽吹き始め)に掘り起こされ、輸入された株が一番生存率が高く、活着が容易だと聞きます。ただ、現地の成育期の雨季に合わせて輸入するということは日本は寒くなる秋から冬の時期です。その時期に抜き苗を管理出来る設備がある人となれば限られてしまうのではないでしょうか。

今回のように日本に夏に入ってきた株は休眠期真っ只中に輸入された株。でも乾季のこの時期はほとんど雨が降らないマダガスカル。乾季を乗り越える為に体力を十分にもった株とも言えると思います。


少し脱線しましたが、今回の株も状態は悪くなく、中には土に植えてもすぐに根を出しそうな様子の株もあります。が、そこは皆さんに少しでも有益な情報を伝える為に今回は水耕で管理します。


ちなみにですが、だいぶ気付いてる人は増えてきたとは思いますが、タンクがあるからといって発根には何も関係ありません。むしろ、腐ったタンクが発根を阻害している場合の方が多いのではないかと思います。

 

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 「タンクがあっても安心ではない」

 

この株は以前発根管理していた別の株です。立派なタンクが付いていましたが、見てお分かりのように真っ黒で死んでおり、カビまで生えていました。一切発根の可能性もありません。タンクが付いていると新鮮、発根確率が高いという説が何故か定着してしまい、業者でも稀にタンクがあって発根容易です!なんて謳う方がいらっしゃいますが、全くのデタラメなのでお気を付け下さい。

強いていうのであればタンクがある分、鮮度のいい切り口まで切断できるチャンスが増える程度です。ただそれはタンク無くとも主根が長く残っている株も同様です。タンクは全てダメな可能性が高いので、あまり意味はないかもしれません。この写真の株もタンクは全て腐っており除去しました。ちなみにこの株は発根成功しており、鉢底から根を伸ばしています。

とはいっても最近は購入する側のお客さんの選択眼もレベルが高くなってきているので、業者側はあまりいい加減な販売も出来なくなってきたように感じます。となると、他の業者にお客さんを取られないように、仕入れる株のレベルも上がるので、私たち趣味家側にとってはいいことですね。

 

購入時の目安

・枝にしなりがある、皺が入っていない、枝が残っているか。

・主根は残っているか。胴付近まで切り詰められていないか。

・幹が黒ずんでいないか。

・木の匂いはするか。酸っぱい匂い、アルコールのような匂いは危険。

・タンクがある、葉っぱが残っているは目安にはならない。

・適正価格か。極端に相場より安くないか(ココ大事!)

ではまずは根元の処理をします。この切り戻しの工程が発根の成功を大きく左右します。よくあるのが何の処理もされずに真っ黒な切り口のまま植えられているパキプス。どこから根が出るの?状態で当然水分を吸い上げることはないので、常に株元は濡れており、それが更に腐り、カビの原因となります。思い切って元気な層まで切り戻しをしましょう。逆に言えば、主根が残っていて、切り戻して元気な層が出て来たのであれば、まだ発根のチャンスはあるということです。ただしそれが胴体部まで切り戻しをしなければいけない状態になると一気に確率は下がります。そういう意味で先ほど主根が長く残っている株はチャンスが増えると書いたのです。

 

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 「同様の水耕管理で発根した株」

 

この写真は私が水耕で管理していた別のパキプスの発根直後の様子です。形成層付近にカルスが出来、そこから発根しているのがわかるでしょうか。稀に脇から発根することもあるようですが、しっかり生きた根が出るのはやはり切り口の形成層付近からのようです。それなのに、その組織が死んでいたらそりゃ発根はしません。だからこそ切り戻して生きてる組織を見つけることが発根成功における大前提で非常に大切な作業です。

このことはネットでしかパキプスを買えない人の参考にもなります。切り口の組織が死んでいると発根の確率が低いということは販売者側もわかっているので自分の仕入れた株に自信がない、発根の可能性が低いとわかってる方は株の切り口の写真を掲載していません。逆に自分の株に自信がある方は切り口の写真を掲載されている方が多いです。形がいいけど、生きてるかわからないなーと悩んだ時は株の根の切り口の写真を依頼してみましょう。もちろん鮮度のいい切り口=絶対発根ではありませんが、一つの目安にはなると思います。もっとも先ほども書いた通り、最近はパキプスを買う時は切り口までちゃんと見ることが購入者側にも定着してきているので、写真を載せずにごまかして状態の悪い株を販売する業者が生き残っていけるとは思いませんね。

またこれらを考えると実店舗においても未発根株は鉢植えよりも抜き苗の方がオススメできます。


とここまででかなりの長文になってしまいましたので一旦区切ります。次回こそ根の処理、管理についてです。