パキポディウム・グラキリスの発根管理について
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今回は発根管理のお話。思えば園芸を趣味としてから割とすぐに海外からベアルートの輸入に手を出しました。私は実はおもちゃの収集も趣味でありまして、海外から物を買うという行為自体は結構昔からやっていたので、植物の輸入にも抵抗無く入ることが出来たのかもしれません。なので何も知らないズブな素人の時から発根管理とは付き合ってますが、未だにこれ!といった管理方法が確立出来ていません。ですが今まできちんと整理したことがなかったので、ここらで一回まとめておこうと自分の備忘録としてこの投稿を書いています。
発根管理の中でも今回は恐らく一番多くの方が検索しているであろうパキポディウム・グラキリスの発根管理についてまとめます。ちなみに品種によって発根管理の方法も変わりますが、同属であれば大きく変えなくとも同じ方法で管理して大丈夫かともいます。
はじめにご了承いただきたいこと
はじめにお断りしておきますが、発根管理は正解がありません。なので同じように管理して枯れた、腐ったのクレームはご遠慮下さい。あくまで少しのエッセンスとして参考にする程度でお願いします。また山採り株に対して嫌悪感を持ってる方、未発根株には興味がない方にも時間の無駄かと思いますので、飛ばしてくださいませ。現地球が山のように輸入されている現状に対して思うことはもちろんありますが、それはまた別の話です。
興味がある方はかなりのボリュームですが、このままどうぞ!(1万5千字超え!)そんなに文字読めないよ!という方は、こちらの動画内で概ね同じような内容を話しています。
【塊根植物/多肉植物】#12 - 梅雨も終わったのでパキポディウム・グラキリスを発根させる心意気を見せる回 〜前編〜【発根管理】
【塊根植物/多肉植物】#15 - 梅雨も終わったのでパキポディウム・グラキリスを発根させる心意気を見せる回 〜後編〜【発根管理】
未発根株を入手する
まずは株を入手しなければ何もはじまりません。
グラキリスをどこから購入するべきか
恐らく最初の壁として、ハードルが高いのはここかなと思います。この数年の塊根植物ブームで思いもよらぬところでコーデックスを見ることも増えてきましたが、さすがにHCに未発根のグラキリスが転がっているのを見たことはありません。なので未発根株を買う際は専門店もしくはネットショップが中心になるかと思います。
一番は言うまでもなく直接手に取って購入することです。数年前には考えられなかったことですが、ここ数年は塊根植物専門店も増えており、直接手に取れる機会も増えました。ここでは特に店舗の名前は紹介しませんが、大きな都市なら1店舗くらいはある印象です。検索してみてください。
実店舗が増えてきたといってもまだまだ都市部以外では直接見て購入できる機会は少ないです。そうすると必然的にネットやSNSで購入するしかない方も多いと思います。
近頃はグラキリスを仕入れて販売している方もとても多くなりました。インスタを開けば常にどこかのアカウントでインスタ販売やライブオークションなんかが開催されています。が、実は海外から直接自身で輸入しているアカウントはさほど多くありません。インスタで販売している方の大半は輸入業者に卸してもらって仕入れたものを販売しているだけのケースがほとんど。元を辿っていくと恐らくある程度同じバイヤーに辿り着くのではと思います。
とはいえ、私たち趣味家がいきなり卸業者に行って「売ってくださーい」とお願いしても相手にされないので、直接、店舗で買えないとなるとこうした販売業者を頼るしかありません。現物は見れませんがその業者が信頼できるのか見極めて購入することは必要です。
・値段は適正か。
→ 極端に高い、極端に安いのは要注意
・アカウントに信用はあるか。
→ フォロワーが多いからといって更新頻度や投稿数に比例していない場合は要注意
・写真の掲載数が多いか。
→ 掲載数が少ないという事が何かを隠そうとしているかもしれません
・購入後の相談には返信してくれそうか。
→ とは言っても他で購入した株の相談は避けましょう
あくまで私が考える目安ですが、大きく外れてもいないかなと思います。
そして個人的に一番避けたいのはヤフオクやフリマアプリでの購入。ヤフオクはまだいいとして、メルカリはじめとするフリマアプリでの購入は本当にオススメしません。たぶん発根させられなかったんだなという株を新着株として売っているのを今まで何度も見たことがあります。そういう株でも、売れちゃっているのがすごく悲しいですが。中にはいい株を出している方もいますが、そうした出品者の方が稀な印象です。
しっかりと株の良し悪しを見極める目を持っているのであればいいかと思いますが、少なくともこれからはじめるぞという段階でのフリマアプリでの購入はオススメしません。
ベアルートを買う時の注意点
では購入する時はどういうところに注意すればいいか。これも正解は無いですし、私も発根までいけると思って買った株が腐っていたなんてことも当然あったので参考程度にしてください。
① 根がどれくらい残っているか。残った根に生気はあるか。
こちらは主根がしっかり残っており、且つ根もシワシワではなく張りがあって写真越しにも生きてそうな印象です。長い分には切ればいいので、なるべく残っているものを選ぶようにしています。
一方こちらは根がほとんど残っていません(そもそも穴空いてるじゃんというのは置いておいてください)。次の根の処理の項目で説明しますが、これでは根の処理をして切り詰められる部分が残っておらず=塊根本体まで切り戻すことになると思います。そうなると再度、リセットする時はどんどん更に塊根本体を掘りえぐっていく形になりますし、腐りやすく、発根管理も難しくなります。
② 塊根本体に気になるへこみ、皺などはないか。色はどうか
もし店舗で直接手に取れるときは軽く触ってみてください。鮮度はあるが、ただ根が無くてへこんでいるだけの株は弾力があり、押してもあまり指が沈みません。一方で傷みが入っている株はグニュッと嫌な感触。
ただし購入前の株をあまり押したり触るのはもちろんやめましょう。それがきっかけで傷みが入る可能性もあります。必ず店主さんに触っていいか聞いてから、優しく扱いましょう。本当にやばそうな株であれば、そんなグニグニ押さなくとも、わかると思います。
これはへこみとともに、嫌な皺が入っています。案の定、腐っていました。
③ 見かけの割に軽すぎる株は注意
これも触れることが前提ですが、持った時に「あれ?思ったより軽いな」という株は避けた方がいいかもしれません。これはグラキリスに限らず、パキプスの抜苗なんかだともっと顕著に現れます。
まずはこれくらいを押さえて購入時は気を付ければいいかなと思います。あとは数を触ると何となく嫌な予感がする…ってわかってきます。最終的にはこういう勘に近いところで判断して、直接手に持って選んだ株はほぼ発根失敗することは無くなりましたが、ネットで買った株は今でも届いてみたらやばかったということはたくさんあります。
そう考えると何より一番にすべきことは信頼できる販売元を見つけることかもしれません。
もし買ったグラキリスが傷んでいたらどうすべきか
購入した株が根を切ってみたら腐っていた、植え込んだらすぐに腐ったなどもあると思います。
こういう場合はすぐに販売元に相談してみましょう。
ただし、遅くても到着して1週間以内かなと思います。植え込んでしまうと正直、どの時点で傷みが入ったのかわかりません。また塊根植物は少し菌が入り、1日でもう取り返しのつかないことになることもあります。
なのでまずは到着時点でよく株を観察してチェックする。その時点で腐っていた、傷みがあった場合は当然、何かしらの対応はしてくれると思います。その時に小さい傷だからいいやと思っていると、その小さい傷から菌が入って、ダメになることもよくあります。小さいことでも何か「ん?」と思うことがあれば相談してみましょう。私個人の意見としては小さい傷だとしても、販売時に店舗側は言っておくべきだと思います。
そして植え込んでからすぐに異常を感じた場合は取り返しのつかないことになる前に抜いて確認、相談しましょう。ただし抜いていいのか判断が出来ない場合は、抜く前に「こういう状態だがどう思うか」という相談でもいいと思います。植え込んで腐ったからいきなり「腐った植物売りやがって!」と一方的にクレーム入れるのはやめましょう。本来は何十年も現地で育ってきた植物を根を切って、いきなり気候も全く違う国で栽培しようとしています。何度も言いますが、思った以上の速度で傷みが入り、ダメになってしまうこともよくあります。安くない植物です。熱が上がってしまうのは仕方ないですが、落ち着いて相談をしてみましょう。
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植え込み用土の話
ここからやっと発根管理の話です。
みなさんは未発根株の用土は普段植え込んでる培養土と使い分けたりしていますか?私は現状、全く使い分けをしていません。いつも植える用土と同じ用土に未発根株も植え込んでいます。理由としては発根管理用の土を使ってしまうと、発根後、早い段階での植え替えが必要となります。出来れば発根しても1年間くらいはそのまま様子を見たいところ。それならば発根してもそのまま管理出来るように普段使ってる土に植えた方がいいじゃん的な思考です。ただそれも発根したという前提のこと。発根をまずさせることが出来なければ何の意味もありません。
ということで今回はまずは土についてしっかり考えてみました。
園芸用土の基本的な知識(保水性・排水性・通気性)
まず用土についてのおさらい。基本的な知識なので知っているよ!という方は飛ばしてください。
用土を語る上でよく聞くワードに「保水性」「排水性」「通気性」という言葉があります。これって当たり前に目にしてますが、それぞれどういうメリット・デメリットかきちんと理解していますか?私は最初の頃は全く理解していませんでした。おさらいするとざっくり説明して以下の通りです。
保水性 … 言葉の通り水もち、水を保つ力。保水性が高過ぎる用土では常に鉢内は湿った状態で空気が不足する。その結果、根は窒息状態となり根腐れなどにつながる。
【保水性の高い用土一例】
排水性 … 水はけ。排水性が高過ぎる用土では常に鉢内は乾いた状態で根が水分の吸収が出来ずに十分な成長が出来ない。
【排水性の高い用土一例】
通気性 … 鉢内に酸素を取り込む力。通気性が高い用土では用土の隙間から根が十分な酸素を取り込むことが出来、成長促進につながる。
植物の根を成長させるには水と空気が必要不可欠です。たぶんみなさん、ここまでは植物を栽培しているとなんとなくわかりますよね。でもどこか引っかかりませんでしたか?私は植物を始めた頃、すごく引っかかりました。私の疑問ポイントは「保水性と排水性を持った土がいいってよく聞くけど、それって真逆の性質じゃん!どういうこと?」「排水性と通気性って同じじゃないの!?」という2点でした。でもよくよく考えるとそれも簡単な事でした。
・保水性と排水性の関係について
例えば黒土は保水性は抜群で水をあげるとジットリとした土になりますが、水を持ちすぎて、鉢内で空気不足になります。逆に軽石のみだと排水性は抜群ですぐに水は抜けますが、鉢内が乾燥し過ぎて根は十分に水を吸収出来ません。どちらも保水性、排水性それぞれで見ればとても優れていますが、植物にとってはあまりよくない環境であることはわかりますよね?そこでその二つの土を混ぜると黒土の保水性と軽石の排水性が合わさって、適度に水も持ちながらも、適度に水も抜ける保水性と排水性を持ち合わせた土が出来ます。それが保水性と排水性のあるいい土ということで、こうした調整をする為に色々な土を混ぜて配合しています。じゃあ混ぜたら保水性と排水性を持った土が出来るのはわかるけど、赤玉土単体で保水性と排水性を持っているってどういうこと!?という疑問が出ませんでしたか?それは赤玉土自体は適度に保水しますが、粒と粒の間に隙間が生まれることで、その隙間を通って水や空気が抜けます。それが保水性、排水性を持った土と言われる理由です。なので経年により赤玉土の粒が潰れて微塵になった場合は排水性の機能が低下し、保水性が高いだけの土になるので定期的な植え替えや、土の再利用は注意が必要です。
上記は同じ分量の異なる用土に同じ量の水を潅水したものです。左から黒土単体、軽石単体、黒土と軽石を1:1で混ぜた土。全てに200mlの水を潅水しました。水がコップに溜まっている量が多いほど排水性がよく、少ないほど保水性がいい。当然ながらコップの水の量は黒土<配合土<軽石でした。
・排水性と通気性
排水性=水はけ、通気性=空気の通りやすさです。植物は根から水だけでなく酸素も取り入れています。保水性が高く、排水性が低い用土だと土の中に水が溜まってしまい、空気が通りません。その為、根が酸素を取り入れられず、窒息状態になり根腐れを起こします。
発根管理に適したPHについて
また用土の話をする上で欠かせないのはPHの話です。私も最近まではPH値を気にすることはなかったのですが、園芸においてあまり重要視されてないのは日本くらいで世界の園芸家達にとってはPHを調整して用土を作り、栽培するのは当たり前であって、気にしないことが信じられないと聞きました。恐らくは日本では用土は買うのが普通で、PHなんて気にしなくても栽培出来ないほどの酸性やアルカリ性に土が傾いていることはないからではないでしょうか。一方、海外では土は買うものではなく、取ってきてその土で栽培するというのが当たり前に行われているようです。となるときちんと性質を確認しなければすぐに植物が枯れてしまうリスクもあり、調整することは当然とされてきたのではないかと思います。
では塊根に適したPHとは?海外のWikipediaに土に関する表記があったので掲載します。
Pachypodium have a pH range from strictly acid soils with a pH Level of 3.5 to 5 to neutral to Alkaline soils at a pH level of 7 to 8. Species growing on gneiss, granite, and quartzite adapt to acidic soils. Species preferring a pH level of 3.5 to 5 are Pachypodium brevicaule, P. cactipes, P. densiflorum, P. eburneum, and P. rosulatum. The species growing on calcareous, limestone, for instance, adapt to a basic substrate. Species growing in acid to almost basic soil that have a pH level between 4.5 to 7 are P. lamerei and P. rutenbergainum. P. meridionale grows in neutral soils. And, some species tolerate both acidic and basic soil conditions. P. sofiense can be found in either soil condition. (For species that grow in only one type of soil pH condition maintaining that "simulacrum" of acidity or alkalinity is crucial to success in cultivation.)
こちらを読む限りは品種によっての違いはありますが、ほとんどのパキポはPH3.5〜5の酸性の用土を好むようです。ただ色々と情報を探していると国内では弱酸性〜中性のPH6〜7が適していると書かれているものが大半で酸性が適しているという情報はありませんでした。それが日本での栽培に適したのが弱酸性なのか、そこまでの情報は拾えず…用土を酸性にするなら鹿沼土、ピートモスなどを配合しましょう。
パキポディウムに適した用土を考える
ここまでが用土についてのおさらい。ここからはいよいよ発根に適した用土を考えます。
保水性、排水性、通気性については前述通りですが、発根管理用土はどの性能にフォーカスを当てるかです。では発根に必要な要素はなんでしょう?温度、風、水、湿度、色々とあるかと思いますが、パキポディウムについて、これらをまとめている情報は見付かりませんでした。というよりも色々な書籍も読んだりしましたが、多肉植物の用土に関する情報が少な過ぎます。ほぼどの書籍もサイトも書いている内容は重複していて、情報は無いに等しいです。こんなブームになる前から育ててる人は確実にいるかと思うのですが…なので一旦、他の植物から考えることにしました。
他の植物から調べるにあたってバラなんかはあまりにも違うなーと思い、同じキョウチクトウ科(とはいっても顔も知らない遠い親戚レベル)のプルメリアの挿木について調べます。こちらはまだ情報があり、プルメリアの挿木で大切なのは以下の点のようです。
・切り口を生きている組織まで切り詰める
・切った後はよく乾かす
・ルートンなどの薬剤を使って発根促進する
・保水性と排水性の高い用土に植え付ける
・水やりは乾いたらすぐ。水切れは禁物
・最低気温が20度以上の5月以降がよい
・明るい風通しの良い日陰で管理する
…など。調べながら「あれ?これって今までパキポの発根管理でやってきたことと同じじゃん」と。この方法でパキポに関しては発根せずに枯らしたことがないのであながち発根管理はどの植物でも大きく変わらないのかもしれません。
これらを総合して発根管理に適した用土は以下のようなものではないかと一旦、仮定してみます。
・保水性と排水性のバランスがとれた用土
・PH値は酸性〜弱酸性
・無肥料
以上を踏まえて配合を考えてみました。
肥料は発根管理用なので入れません。自分で買い揃えて混ぜてもよかったのですが、今回は以前も紹介したカインズのオーダーメイド用土で注文しました。納期は8日間でしたが、注文から4日で届きました。
細かくて水捌け悪そうですが、川砂が多いので見た目よりは水は抜けます。ただ、川砂を15%にして、赤玉35%、鹿沼20%、軽石15%にしてもよかったかも。
PHはどうでしょうか。買ったけどあまり使ってなかったPH計があったなと引っ張り出してきて値を計測してみます。
電池不要で濡らした土にズボッと挿すだけ。計測値が結構ブレるとのことですが、そこまで細かい数値を求めるわけではないので十分です。
PH値は5.6です。弱酸性でちょうどよいですね。
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グラキリスの 発根管理について
用土も準備が出来たので、いよいよ最後は株の処理をしてから植え込み管理開始です。
未発根株の根を処理する
ベアルート株の見極めは前述した通りなのでここでは省略します。今回はちょうど最近入手した新鮮なベアルート株が手元にあるのでこちらの発根管理をしつつ、管理方法を紹介したいと思います。
日本に到着した株はいくら新鮮がよくても大抵は根の切り口は枯れてカサカサになったりしています(あとは現地で薬剤を塗布されていることも)。本当に新鮮な株であればこのまま植えても問題なく発根するのですが、時間がかかるので、火で炙って消毒したカッターなどを使って根が出やすくなるお手伝いとして根を切り詰めます。
腐ったり、既に枯れてる部分は刃を入れた時にグニっと根がつぶれて切りにくいですが、生きている部分はさくっと刃が入るので、慣れてきたら切り口見る前でも刃を入れた時点でなんとなくわかります。
だいぶ新鮮な組織が見えてきましたが、半分は枯れている状態。もう少しだけ切りましょう。
塊根内の水が溢れてきて見るからに新鮮です。この状態であれば言うまでも無し!
ただし、場合によっては切れど切れど、新鮮な組織が出てこない場合もあります。本来は綺麗な根の部分まで切りたいのですが、これ以上切ると塊根本体まで達してしまうという場合もあると思います。その場合は私はある程度、綺麗な組織が見えているのであればそこで止めて、殺菌、植え込み処理をしてしまいます。塊根本体まで切り詰めるとかなり発根率が下がってしまう気がします。とはいえ全体が真っ黒な状態だとそのまま発根する確率はかなり低いので、株によっては覚悟して塊根本体まで切り詰めることもあります。
ただここまで切ると発根管理は難航します。そしてここまで切ってもまだ黒いままだと塊根部まで傷みが進んでいるので、購入したばかりの株なのであれば販売店に相談したほうがいいかなと思います。ただし、土に植え込む前に相談しましょう。発根管理を開始してしまうと、いつの時点で傷みが入ったのかわからないので、補償してもらうのはなかなか難しいと思います。だからこそベアルート株は購入後は早めに処置して、株に問題がないか確認しましょう。
グラキリスを植え込む前の準備をする
今回使う薬剤:オキシベロン/ベニカXファインスプレー/ルートン
新鮮なところまで根を切り詰めたら、次は薬剤を使用して発根促進処理をします。使うのはこちらの薬剤など。薬剤については次の項目で記載しているので、そちらを参考下さい。
根を切り詰めた後はオキシベロンの40倍希釈水に大体12時間ほど浸け置きます。あまり長いと成長ホルモンの過剰摂取になり、発根阻害するそうなので多ければいいというものではないので気を付けてください。置き場は直射日光と雨の当たらない場所で。屋内でいいと思います。
12時間後、希釈水から上げると、ベニカXファインスプレーを2,3プッシュし、殺菌しておきます。昨年から殺菌はこれだけですが、今のところ腐ったとかありません。そのままベニカ乾くまで風通しのいい場所に置いておきます。
ベニカを散布して十分乾かしてから最後にルートンを薄く塗ります。ポイントは切り口だけで無く、根が出そうであろう根元全体に薄く塗ること。切り口から発根することより、他の場所から発根してくる時の方が多いです。オキシベロンとルートンの二重塗布はどうなんだと思いますが、すぐ水やりするのでルートンはさほど意味ないのかも。
あとは植え込むだけ。鉢は通気性のいいスリット鉢をいつも使用します。鉢底に軽石多めで更に通気性を高めて植え込みます。植え込み時の写真が無く、申し訳ありませんが1/3が軽石で少し多めです。あと大きめの鉢に多めの用土で植えることは、発根管理においては全く意味がないので、避けましょう。陶器鉢でも発根管理出来ますが、湿度や温度の調整が難しいのであまり最初からはオススメしません。発根管理に慣れてきて、自分の中でなんとなくコツが掴めているのであればいいと思います。
表土の富士砂は発根管理には不要ですが、スリット鉢は柔らかいので株がズレたりする為、私は株の固定も兼ねて硬い富士砂を敷いています。でも紐で固定するなどの方が確実かと思います。私は不器用なのでいつも紐が上手くかけられないので、紐使った固定はあまりしません。そもそも紐で固定しないと抜けちゃうくらい動かすことの方が問題。ほとんど私は動かなさいので、固定無しでも問題ありません。
あと最近は株を固定するためにスタイロフォームを使ったりするみたいですが、私は使ったことがありません。ちゃんと意味を考えて使うのであればいいと思いますが、ただなんとなくみんなやっているからと意味を考えずに使うのであれば、資材代の無駄なので不要だと思います。個人的にはね。
発根管理に使いたいオススメの薬剤
植え込む前の準備で薬剤を使いましたがグラキリスの発根管理は20株を超える数を扱ってきましたが、私もこの処理は正直言うとどの程度効果があるのかわかっていません。根の切り詰め作業と同じで新鮮な株ならこの工程飛ばしてもすぐに発根しますし、発根困難な株はいくら薬剤を使ったとしてもすぐに発根するとも限りません。
なので「使っておけば安心できる」程度に考えてもらっていいかと思いますが、私は少しでも発根の確立を上げたいのでほぼ毎回使用します。
発根促進の薬剤はいくつかありますが、やはり一番オススメ出来るのはオキシベロンです。
オキシベロンは植物ホルモンのオーキシンの一種のインドール酪酸の製剤です。オーキシンは成長ホルモンのひとつでカルス形成と根原基の分化の促進をします。植物ホルモンについてはここで書き出すとキリがない&私も付け焼刃の知識なので、興味があれば検索してみてください。詳しいサイトや論文がいくらでも出てきます。ここではオーキシンというホルモンが根を作るのを促進するんだな程度の知識で大丈夫です。
一方、聞き覚えはオキシベロンよりもあるかと思われるルートンもオーキシンの一種。だけどこちらはナフタレン酢酸といって合成オーキシンです。ただしこちらも植物ホルモンには違いありません。こちらは粉で使いやすい。
この二つの違いに関してはオキシベロンの方が効果が高いとは言われているようですがあまり違いはわかりません。まずは液体か粉末かだけで状況に合わせた使い分けでいいのではないでしょうか。
あとはメネデールやラピッドスタートなどの薬剤もありますが、あちらはオキシベロン・ルートンのホルモン剤とは違い活性剤です。なので発根管理で考えるとオキシベロン・ルートンなどのホルモン剤をまずは使うことをオススメします。
発根管理に適した環境は?(温度・湿度・日光)
植え込んだ後の置き場は5月以降であれば外でも問題ありませんが雨に濡れる場所はNGです。株が濡れてびしょびしょの状態が続くと根が無い未発根株はあっという間に腐ってしまいます。正確には塊根自体はびしょびしょになってもすぐに乾きますが、土がずっと意図せず濡れている状態は良くありません。後述しますが、この意図せずというところがポイントです。
直射も出来るだけ避けた方がいいので風通しの良い半日陰の場所がいいです。我が家では最低気温が15℃を下回っていればハウス内、最低気温がそれ以上だと雨に濡れない屋根のある置き場のあまり陽が当たらない場所です。真夏だと40%くらい遮光している場所での管理から始めていく方がいいと思います。逆にまだそこまで暑くない時期は遮光下だと鉢内の温度があまり上がらないので、遮光していない場所で管理することもあります。直射下でも風があれば芋が煮えちゃうことは無いと思います(少なくとも今まで経験ない)。逆にハウス内とかだと風の通りが無くて高温になると痛みの原因なので気を付けてください。簡易ビニールハウスなんかは春でも日中かなり温度が上がるので注意。高すぎる温度も発根阻害します。それなら屋内の窓際とかに置いておく方がいいともいます。
個人的に発根管理にベストの時期は梅雨の湿度が高い6月くらい。発根には水も必要だし、湿度も必要です。あまりカラカラな時期だと発根にも時間がかかります。
逆に秋以降に発根管理するのはあまりオススメしません。これまで我が家でも秋以降の寒くなり始める時期に発根管理をしたことはありますが、ほぼあまりいい成績ではありません。ただもちろんガラス温室など使えば発根管理は年間通して可能です。が、やはりガラス温室だと水分や湿度の調整が難しいので、私はもう断念することにします。
植え込み後の管理について
植え込み後は植え込み直後にまず潅水をたっぷりとして微塵を抜きます。微塵があるままだと鉢内が常に湿度が高すぎる状態であまりよくありません。その後の潅水は乾いたらたっぷりと。ただ乾ききるまで1週間もかかるような風通しの悪い場所に置くのは避けた方がいいと思います。大体、発根管理適期でたっぷり潅水しても2日くらいで表面は乾いているくらいの風通しのいい場所での管理がいいと思います。もし乾くのにそれ以上かかるのであれば置き場変えるか、水やりの量を減らします。ある程度、きちんと意識して鉢内がどんな状態かコントロールすることが必要です、なので意図せず雨に濡れてビショビショになることは避けてください。あとは水やりと乾燥を繰り返すことで発根します。腰水などは不要です。
霧吹きも個人的には不要。グラキリスの発根管理で霧吹きやったことがないです。ただし湿度が維持できない時は湿度を上げる意味で霧吹きするのはアリです。湿度は最低50%。温度は25℃以上を保つようにイメージしましょう。
しばらくすると順調なら芽吹き始めると思いますが、まだまだ油断はできません。芽吹いても枝先でずっとウズウズしていてなかなか葉が展開しない時はまだ発根していない可能性が高いです。
発根すれば「あれ?」と明らかに塊根が膨らんでくると思います。また葉の展開の勢いが一気に進みます。その見極めも慣れないうちは大変ですが、日々観察していると、良い成長の気付きも、悪い方の気付きもどちらも何かしらの変化があるので、観察は大事です。
こうした透明のプラ鉢に植えるのもオススメ。この場合は鉢内の温度が上がりにくいので上からさらに黒プラ鉢を被せて管理します。
その他の管理方法について(水耕など)
最後に今回紹介したのは土に植える方法でしたが、その他の発根管理について。と言っても他の方法としては水耕発根管理くらいです。ただしこちらに関しては私は一切成功したことがありません。
個人的には植物日誌さんのブログなんかは参考になると思います。
最初から水耕で管理する方もいるみたいなんですが、私は信じられません。私の中で水耕は土耕でどうすることも出来ない株の最後の手段。
最後の手段でも成功したことは無いんですけどね。水耕で出る根も土耕の根とは異なるので、土に切り替えるときも難しいと思います。最後の選択肢としてはアリかと思います程度でお伝えしておきます。
以上が私の管理方法でした。
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おわりに
…最後に改めて。ここまで書いておいてこういう身も蓋もないことを言いますが、結局のところまずは株の鮮度というのは間違いありません。状態の良い株なら何も下処理もせず、陶器鉢に植えてもすぐに動き出します。逆に長らく抜き苗のまま放置されたり、海外で適当に採取されてダメージが残っている株はどうやっても発根しません。ないので、まずは未発根株の購入は信頼出来るところから買ってください。そして根気強く、折れない心も必要です。全く気候が違う場所からやってくる植物が簡単にその地の気候に慣れるのは想像以上に難しいです。今回投稿した方法で100%発根する保証はもちろんありませんし、株の状態によっては抜いて確認したり、水耕に切り替えたり、ちゃんと目で確認しながら管理する必要があります。枯らしたり、腐らせたりすることもあると思いますが、勉強代としてじゃあ何が原因だったのかをしっかり考えて改善していくしかないですね。
繰り返しですが、あくまで!私はこんな感じで私は発根管理していますの紹介でした。ちょっとだけ参考程度にお考え下さい。かなりのボリュームになってしまいましたが、最後まで読んでいただいた方はありがとうございました。
発根管理は悲しい想いをすることも多いですが、発根して葉が出た時の喜びはたまりません。現地の自然破壊などを考慮すると、これからどんどんみんなも輸入株の発根管理をしようぜ!とは言えませんが、長い年月をかけて育ってきた株達。どうせ、日本にもう既に根無しで入って来たのであれば、せめて大事に育てて一生付き合っていきたいですね。