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パキポディウム・グラキリスの受粉作業について


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パキポディウムグラキリスの種を我が家で取るということ

今年もパキポディウムの開花の季節が始まりました。

我が家でも春の目覚めと共にいくつものグラキリスの花が開花しています。

 

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花が咲いたとなるとやはり取りたいですよね・・・?種。

近頃は実生ブームもあり輸入種子ですらとんでもない値段になってきて手が出ません。毎年品種関わらず一定数パキポディウムの種蒔きはしていたのですが、今年は種を確保できていません。ということで我が家で採りましょう種を。という本日の内容。

 

最初にお伝えしておきますが私の受粉レベルは0です。昨年までは数年前に一度種が取れたきり全く成功しておりません。成功しなさ過ぎて近年は花が咲いても受粉作業すらしていませんでした。ところが今年はどうにも輸入種子すら購入出来ず、それならなんとか我が家で種を取ろうと。きちんと色々と考察して受粉作業を行った結果、それなりに成功しそうな感じなので備忘録として、今回は紹介したいと思います。

 

なので受粉が下手な人のたわごと程度の情報として参考にしてください。種取りが得意な人はたくさんいらっしゃいますよー。

 

パキポディウムグラキリスの受粉を試す

必要な道具

 

何を使って受粉するかというのは一番重要なポイントです。筆や釣り糸、爪楊枝や猫の髭まで色々な物を使ってみなさん受粉をされていますが、私が色々と試してみて辿り着いた道具はこちらです。

 

 

 これなんだという感じですよね。どうやら3Dプリンターのノズルを掃除する工具だそうです。なんとなくAmazonで使えそうな工具が無いか探していたら見つけました。そんなに高いものではないのでダメ元で購入して試してみたところこれがばっちり使えている感じです。

 

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細さ違いで短いのから長いのまで10本入り。短い方が針先が細いんですが、短すぎると作業がしにくいので一番長いのを使っています。それでもかなり細い針先です。

 

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細くてしなりもあるので使いやすい。ただ針先が鋭利なので少しやすりなんかで丸くしてもいいのかなと思いましたが、そのまま使っていて、今のところ問題ありません。でも危ないので保管は気を付けてくださいね。余裕で刺さります。

 

あと綿棒も用意しておきましょう。リンク貼っていますがなんでもよいです。100均で買ってきてください。

 

 
実際に受粉をしてみる

 では実際に受粉をしていきましょう。まずは花粉と雌蕊の場所を把握します。

 

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花びらを毟って葯を露出しました。この三角形の葯の内側に花粉がついており、葯に守られている形で雌蕊があります。更に葯を解体してみます。

 

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古い花を解体したので実際に花粉がついていたりしないのですが、なんとなく花の構造はわかる写真かなと思います。実際に受粉する時はここまで解体しての受粉は出来ないので、葯の隙間から針を入れて花粉を掻き出す→雌蕊に花粉を付けるという流れです。この辺かなとイメージして受粉作業を行います。

 

では実際に作業をしていきます。

 

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まずは受粉作業をしやすくする為に花びらを除去します。縦に咲いて毟る方法が一般的なようですが、それだと蜜が多く出て上手く作業が出来ないことが多かったので、私は輪切りにします。大体、葯の手前くらいまで。花びらを取ることが目的なのでこの辺りは各自にお任せします。花を楽しみたいという方は花びらついたままでもいいですが、圧倒的に作業はしにくいです。

 

この切り方だと蜜が少ないとは言いながらも蜜は出てくるのでここで綿棒の登場です。

 

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分泌される蜜は受粉作業の際は邪魔でしかないので、綿棒で蜜を取っておきます。ティッシュとかなんでもいいですが、綿棒で吸い取るのが一番やりやすかったので、我が家ではこの方法です。

 

ここまでが前準備。いざ受粉作業をしていきましょう。

 

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まずは花粉を取る側の花の作業です。葯の隙間に針を入れて花粉を掻き出します。作業をしながら写真が撮れなかったので動画を見ていただけるとまだわかるかな?

 

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このように針先に花粉がたくさんつきます。これを今度は受粉をさせる側の花で全く同じことを行うだけ。ね、簡単でしょ。この辺りも動画を参考にしてみてください。

 


www.youtube.com

 

パキポディウムグラキリスの受粉成功のポイント

受粉をさせるタイミングについて

一般的には植物は咲いたばかりの花は花粉がまだ出来ておらず、雌蕊も受粉の準備が出来ていません。ただグラキリスに関しては開花した日にごそごそやってみても花粉がちゃんと出来ている気がします。が、一応咲いてから2,3日程度待ってから受粉作業は行うようにしています。確かに咲いてすぐの花は受粉成功率低い?かも?念のためという感じですね。

 

受粉作業を行う時間帯について

こちらも一般的にはですが虫が活発に動くよく晴れた日の正午頃が一番花粉が出ていて成功率が高いと言われています。が、仕事をしているとそうは言ってられないので我が家では出社前の朝8時頃もしくは帰宅後の夜9時頃の作業が多いですが、特に問題なく結実してくれています。が、少しでも確立を上げるためにはこちらも先人の知恵に倣って晴れた日の正午頃に作業を出来ればいいにこしたことはありません。

 

受粉後の判断

受粉作業をした後に気になるのが果たして成功しているのか失敗しているのかだと思いますが、その判断はまずは花びらが落ちた後でなんとなくわかります。

受粉が成功した → 花弁は落ちても、雌蕊は子房に残っている

受粉が失敗した → 花弁と一緒に雌蕊も落ちる

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この写真が一番わかりやすいかなと思います。失敗した花は花びらが落ちた後はすぐに茶色く枯れてきてポロっと花茎から落ちますが、成功している花は写真のように花びらが落ちた後も青々しさを保ったままです。

 

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そこから1週間くらい経過すると明らかに子房が膨らんでくるのがわかると思います。ここまでくるとまず第一ステップはクリアです。が、ここから枯れて落ちたり、鞘は弾けたけど中身は種なしだったり、種は取れたけどシイナ(発芽能力は無い)だったりするのでまだまだ安心はできません。

 

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それでも子房が膨らんでくるのを見つけた時の嬉しさと言えばこの上ありません。特に我が家では昨年までずっと失敗続きだったので、今年は嬉しさ100倍です。この調子でなんとか種が取れますように…

 

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更に1週間(受粉作業から2週間程度)経過した様子。これは種を付けすぎましたねぇ…

 

注意点

最後にいくつか受粉の際の注意もあるのでそちらもお伝えしておきます。

グラキリスは自家不和合性です

自家不和合性とは?

 

自家不和合性(じかふわごうせい、英語:self-incompatibility, SI)は、被子植物の自家受精を防ぐ数種類の遺伝的性質の総称である。ある植物個体の正常に発育した花粉が同じ個体の正常な柱頭に受粉しても受精に至らないこと、あるいは正常種子形成に至らないことを自家不和合と呼ぶ。一般的に両性花で観察されるが、クリ・ヘーゼルナッツなどの雌雄同株異花などでも観察される。

自家不和合性の植物では、同一または類似の遺伝子型を持つ個体の柱頭に花粉が到達しても、花粉の発芽・花粉管の伸長・胚珠の受精・受精胚の生育のいずれかの段階が停止し、結果として種子が形成されない。雌蕊と花粉との間の自己認識作用によって起こる事象であり、その自己認識は柱頭上(アブラナ科・キク科)、花柱内(ナス科・バラ科マメ科)、子房内(アカシア・シャクナゲ・カカオ)で行われる。

Wikipediaより

 

つまり一株では種が出来ませんよという植物です。・・・が、結論言っちゃうとグラキリスは自家受粉します。現に我が家で今年一番最初に咲いた株は他の株と花が合わなくて、自家受粉でしたが、結実し、子房が大きくなっています。ただし自家受粉の種は発芽能力のないシイナの可能性が非常に高い、もしくは採種できる前に枯れて落ちてしまうことがほとんどのようです。なのでやはり2株揃えて受粉作業をすることをオススメします。

 

種の付けすぎ注意

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こちらの株はダメ元で咲いた花からかたっぱなしに受粉作業をしました。

 ・・・結果全て結実してしまいました。

今のところ順調に育っているようには見えますが、聞いたところによるとひとつの花茎で2つ程度の結実にした方がよいとのことです。これ以上種を付けてしまうと、栄養分が行き届かずに全ての種が枯れて落ちてしまう可能性が高いそうです。なのでひとつの花茎からは2つ程度の受粉にしておきましょう。

 

最後に

今回はパキポディウムグラキリスの受粉作業の紹介でした。SNSなどを見ていると受粉をして種を取っている方は毎年、一定数お見かけするのですがその割には情報が少ないのでまとめてみました。

 

グラキリスをはじめ、塊根植物はこの樹形に至るまでとんでもない年月がかかっています。それらの膨大な月日をかけて成長した株が無理やり抜かれ、根を切られ、輸出され、そして何株が枯れて朽ちていったのでしょうか。

 

言っておきますが私は現地球嫌悪派ではありません。というより我が家にはそういう人たちが見れば低評価を連打するくらい現地球はたくさんあります。ただ、いつまでもこうした状況が続くとは思っていません。現地球を持っている責任として、少しでも子孫を残して増やしていくことが責務かなと感じています。

 

今回の投稿が少しでも誰かの役に立ち、国内実生が増えることを願っています。